メンテナンストライボロジー：転がり軸受の異常診断における最近の技術動向

摘要

回転機械の異常診断においては、振動測定による状態監視を行う際に具備すべき装置と手法のガイドラインが2002年初頭にISOで策定された。 これは機械システムの信頼性·安全性を確保するために、回転機械を対象とした状態監視保全が広く採用され始めたことを意味している。ISOで採り上げられた振動法に限らず、種々の回転機械およびその構成要素について正常状態から損傷を経て性能限界に至るまでの経過をオンラインで評価する異常診断技術への期待は大きく、様々なアプローチが進められている。 代表的な回転機械要素である転がり軸受の異常診断では、図1に示すように振動法が主流を成しており、シェア2位の油分析法、3位の温度法と併せると大多数を占める。接触面形状の変化に敏感な振動法は転がり疲れ、摩耗、焼付きなどについて幅広く適用することが可能であり、最も汎用性が高い。油分析法はリアルタイムでの異常診断という点では若干難があるものの、各部品の損耗現象と直結したデータが得られるため、やはり汎用性は高い。温度法は何らかの損傷が発生したのち、二次的に生じる温度上昇を検出する関係上、損傷あ早期発見には向かないが、軸受の溶融や破断などのクリティカルな損傷を防ぐには簡便で有効な方法である。