二酸化炭素の鉛直プロファイルを現地観測するドローンシステムの試作開発と飛行試験

摘要

大気中の二酸化炭素（carbon dioxide: CO_2）は主要な温室効果ガスであり，人間の生活や経済の活動由来の排出によって，その比率は地球規模で増え続けている．地球温暖化の支配的な原因は，温室効果ガスの増加である可能性がきわめて高いと考えられており，温室効果により海水準の上昇や異常気象の多発が問題として顕在化している．地域規模で温室効果ガスの増加抑制に取り組むためには，土地の利用形態が異なる複数の地域で温室効果ガスの濃度を調べ，吸収量·排出量を定量的に評価し，それらの要因を明らかにする必要がある．環境省と国立環境研究所，宇宙航空研究開発機構が共同で推進している温室効果ガス観測技術衛星GOSAT（Greenhouse gases Observing SATelliteが2009年1月に種子島宇宙センターから打ち上げられた．軌道高度が約666kmの地球表面のほぼ全域を周回するGOSATは，同一地点の観測データを3日ごとに取得する．観測には太陽の反射光や地球から放射する赤外光を利用しているものの，厚い雲に覆われている場所では反射光が届かないことから，熱帯などの雲の多い地域では観測データの欠損が発生することがある．上空のCO_2濃度の鉛直プロファイルを高高度かつ高精度に観測する方法としては，有人航空機に専用機材を搭載して観測する方法，ライダーを用いる方法，ゴム気球に小型軽量の機器を吊り下げて観測する方法が挙げられる．これらの方法では，コストが高いことや観測可能な地域が限られることなどが課題となっている．