交通システムの動向と展望

摘要

鉄道は，環境負荷が少なく安全で安定した大量輸送が可能な交通システムとして，日本のみならず世界各国で社会インフラの根幹に位置付けられている。また，21世紀に入り，人と物の移動手段としてだけではなく，情報通信技術を取り入れることにより，個々の鉄道利用者にとって，より安全，円滑，快適なサービスを提供することが重要な課題となってきている。 三菱電機は"Better Mobility"を交通事業のスローガンとして，次の2点に焦点を絞り，鉄道の価値向上につながる製品を提供することを目指して努力している。 まず，当社は，車両システム（推進駆動装置，制動保安装置，情報制御装置，空調装置）のすべてを供給できる国内唯一のメーカーとして，“安全·安定輸送の確保”“環境への適合”“快適性·サービス水準の向上”“ライフサイクルコストの低減”をコンセプトとした製品を提供してきた。 現在，国内はもとより，世界21か国で当社製品が活躍している。 今後は，グローバル化を加速して，世界No.1メーカーを目指して更なる努力を重ねていく所存である。 また，当社は，車両システムを基幹製品としつつ，移動体通信システム（列車無線，無線LAN (Local Area Network)，ミリ波）と地上系システム（信号，変電，基地，運行管理，輸送計画）についても豊富な実績を積み重ねて，基本計画から設備運用·保守までの総合エンジニアリング力を蓄積してきた。 今後は，この総合エンジニアリング力に裏付けされた交通システムプロバイダーとして，情報通信技術を用いた地上と車上の情報連携による交通システムの革新をリードしていく所有である。 この特集号では，車両システムを構成する推進駆動装置，制動保安装置，情報制御装置について，最新の技術動向と今後の展望を詳細に述べる。 また，地上と車上の情報連携による新たなソリューションとして，車両情報のリモートモニタリングシステムとダイヤ乱れなどの異常時対応システムについても述べる。本稿では，先進的な製品例を中心に，交通システムに対する当社の取り組みを述べ，将来展望についても述べる。