容量200 /以下の小型水槽を用いた低収容 密度によるクロマグロ初期飼育の検討

摘要

クロマグロ Thunnus orientalisの種苗量産技術は近年急速 に向上し，2018年における人工種苗（体長5cm程度）の 養殖場への活け込み数は37.9万尾に達する（農林水産省 2019)。しかし，卵から人工種苗（体長5cm程度）までの 生残率は数％ (升間2017)とマダイゃヒラメなどの養殖対 象魚種と比べて極めて低く効率的な人工種苗の生産が実施 出来ていないのが現状である。より効率的に種苗を生産す るためには，生産期間中の様々な減耗要因を検討および解 明する必要があるが'，それらを実施するためには小規模水槽による飼育実験が必要となる。クロマグロは小規模水槽 での飼育初期の生残率が低いため精微な飼育実験が困難であった力、田中ら（2010)やNakagawa et al.(2011)の成 果により10日齢程度まで小規模水槽で飼育が行えるように なった。この様な状況の中，ゲノム編集技術を用いて養殖 適正の高いクロマグロを作出することを目的として2014年 より内閣府が主導する研究プロジェクト「戦略的イノべ一 ション創造プログラム（次世代農林水産業創造技術)」の「ゲ ノム編集技術等を用いた農水産物の画期的な農水産物の開 発」が始まった。一般に，魚類のゲノム編集は，人工ヌク レアーゼを受精卵へ顕微注入することで遺伝子の変異導入 を行う力*，通常の顕微注入技術では一度に処理できる受精 卵は数百粒程度である。したがって，変異導入により得ら れる形質を評価するためには数百粒程度の受精卵を用いて， それらの形質を評価する必要がある。そこで本研究では， 今後ゲノム編集をはじめとしたクロマグロの育種研究の基 盤技術となる小規模水槽を使用した低収容密度での飼育実 験を行った。