食品分野における統計処理 －データの本質を知る－

摘要

近年，自然科学や人文科学のあらゆる分野で統計学的手法が用いられ，発表するデータについても最低限の統計処理を求められることが多くなってきた．手軽に使える統計処理用のコンピュータープログラムも数多く出ており，統計処理自体は随分と身近なものになっている．プログラムの利便性は高く，「有意差」を出すこと自体はさほど難しいことではなくなった．しかし，その一方で，ブラックボックス的部分が増え，理論を詳しく知らなくとも簡単に結論が導き出され，結果の解釈の誤りを見過ごすという危険性も高まっている．本来統計学的手法というのは，データを収集した彼の解析のためにのみ使用するものではなく，データの収集方法や解析する方法を検討することをも含む．統計学は「集団の性質を要約して記述する」，あるいは「一部の標本から集団の特徴を推測する」学問である．要約によってそぎ落とされた情報もあれば，特徴を推測する方法も一通りではない．平均値がすべてではないし，状況に応じて検定手法を主体的に選択しなければならないときもある．