マツタケ人工栽培技術開発に向けた研究

摘要

マツタケ(Jricholoma matsutake)は、世界で最も高価な食用性きのこの一種である。マツタケは、 シロという、土壌ゃ菌根に繋がる菌糸塊を土壌中に発達させて、そこからきのこを発生させる。こ れまで、人工栽培技術の確立に向けた取り組みが多くなされてきたが、成功例は一例もない。その ためマツタケの生産は、ァカマツなどマツ科の針葉樹林において自然発生するものを収穫するのみ である。マツタケは1940年代前半には、12,000トンの収穫量があつたが、近年は、数十トンにま で激減している。その原因としてはマツ材線虫病の発生によるマツ林の減少や、マツ林が十分に管 理されずにマツタケとマツとの菌根共生が損なわれてきたことが考えられる。近年、接種試験にお ける菌根ゃシロ様構造物が作製されるようになり、また宿主範囲の研究や共生形態（樹木への影響） が解明されてきた。また、DNAを用いて菌株の識別が可能となり、原産国が容易に判別でき、シ 口の遺伝学的構造など解明されてきた。また、マツタケとマツの共生関係に関する知見も得られて いる。本総説においては、最初に、基礎的なマツタケ研究の成果を紹介して、その後、マツタケ人 ェ栽培に関する様々な取り組みについて紹介する。