東北地方におけるマッ材線虫病とマツノマダラ カミキリの30年間の分布変遷

摘要

東北地方におけるマツ材線虫病は，1975年に宮城県 石卷市で確認された（早坂ら1976;庄司ら1976)。 以来本病の分布が精査され，宮城県のみならず福 島県でも被害が確認された（在原1976)。その後， 1979年に山形県と岩手県でも被害が確認され（斉 藤1980 ；作山、佐藤1979)， 1982年に秋田県へと 分布を拡大し（野村1984),さらに2009年に青森県 でも自然感染木が発生し，東北6県で被害が認めら れる。本病は日本に分布していなかったマツノザィ センチユウ、Bwrsap ne lewchus xylopnilus (sterner and Buhrer) Nickle)力;，マツノマダラカミキリ (Monochamus alternatus Hope)によつて伝搬され (森本.岩崎1972),ァカマツ(Pinus densiflora Sieb. et Zucc.)とクロマツ(P. thunbergii Pari.) の萎凋枯死を引き起こす（清原、徳重1971)。本病 はマツノザィセンチユウを付随したマツノマダラ力 ミキリの分布拡大に伴って西日本から東日本へと被 害分布が拡大した（小林1976)。現在では東北地方 を分布北限としているカ气分布北限地域ではさらに 北上傾向にあるため分布拡大阻止のために防除努力 がなされている。しかし，防除が行き届かないほど の広大な被害地であることに加え，寒冷地特有の年越し枯れや（市原ら2006a, b ；陳野ら1987),マ ッノザィセンチユウが何年も潜在感染した後に枯 死するマツがあること（長岐、金澤2005)，枝枯れ や被圧木が伝染源になること（作山ら1988 ；佐藤 ら1988a)，また媒介昆虫については，マツノマダ ラカミキリが2年1化になることや（佐藤、作山 1984),力ラフトヒゲナガカミキリ（M. saltuaruis Gebler)が媒介者となること（滝沢1985)など， 伝染環を複雑にする様々な要素があるため，防除は困難を極めマツ材線虫病の北上を許している状況にある。