水稲種子発芽時の酸素供給制限が根端細胞の微細構造に及ぼす影響

摘要

水稲ササニシキを供試し，好気発芽はシャーレの吸湿濾紙上で，嫌気発芽は水深が5cmになるように蒸留水を注入した100mL容三角フラスコ内で，それぞれ12－72時間発芽させ，置床時間の経過に伴う根端原中心柱細胞の微細構造を，電子顕微鏡で観察した．細胞内小器官のうち，呼吸と深いかかわりをもつミトコンドリアは，置床時間の経過に伴って発達し，好気発芽の根では梶棒状ものが観察され，さらにクリステの増加も嫌気発芽のものに比べ，置床時間のより早期に生じ，発達も良好であった．小胸体は主に粗面小胞体がみられたが，好気発芽の置床48時間以降は滑面小胞体も観察された．小胞体の形成は最初袋状のものが多数生じ，以後管状に変化した．このような変化は好気発芽で置床後の比較的早い時期に認められた．また，小胞状のものが好気発芽で48時間以降に多数観察された．リボソームのポリソーム化が好気発芽で盛hであった．ゴルジ体も好気発芽の根で発達が良好であった．脂質体は好気発芽では置床後48時間で消失したが，嫌気発芽では72時間になっても存在した．プラスチドヘのデンプンの蓄積は好気発芽でのみ観察された．以上のことから，好気発芽においては嫌気発芽におけるよりも，根の物質代謝が旺盛となるような微細構造が確認された．