農薬施用の異なる水田の畦畔におけるカメムシ群集の多様性

摘要

伝統的な農法をとる水田生態系は，河川の後背湿地の代替的機能を果たし，湿地や水辺に依存する生物の維持に貢献してきた（守山，1997）。 しかし，近年，農薬の多用や大型機械を使用した近代農法への転換や大規模な圃場整備が進hだことで，労働生産性が向上した反面，水田の生物多様性の減少が報告されている（市川，1998；中川，1998）．このような背景のもとに近年，水田の群集構造や生物多様性の保全に関する研究や活動が盛hに行われるようになった（大黒1998；杉山，1998）．桐谷（1998）はIBM（総合的生物多様性管理）の概念を提唱し，その中で水田生態系の生物多様性の保持には水田だけでなく，畦畔や周辺農地，雑木林などを含めた管理方式が必要だとしている．しかし，水田内生態系の陸地部分については，斑点米カメムシの発生と栽培管理方法に関する報告（植木，1995；中田，2000）はあるものの，生物多様性についての研究はされてこなかった．