細菌分類学研究の過去，現在，そして未来

摘要

初めて細菌の分類を提唱したのはプロイセンの植物学者であり微生物学者のFerdinand J. Cohnであると いわれている.1872年に自らが創刊した学術雑誌 Beitage zur Biologie der Pflanzen (= ContriDutions to the Biology of Plants)に寄稿した論文において行 われたのだという.残念ながら，筆者はこの歴史的な 文献を手にとって読hだことはない（たとえ幸運にも その機会が訪れたとしても，ドィッ語に疎い私はその 内容を一切理解することなどできないだろう.きっと，失われた聖杯グラールを目の当たりにした考古学者の 如く.唯々歓喜に打ち震えつつ見開く両目から涙滂沱 として流すのみだ）.ただ原本を目にすることこそ叶つ てはいないが，そこに記されたとされる内容は，様々 な研究者によって，私にも理解可能な言語に翻訳され 伝えられている.それによれば，この世界初の分類体 系は細菌の細胞形態に基づくものであったという.Micrococcus, Bacterium, Bacillus, Aibrio, Spirillum,そしてSpirochaeteのつの(Genus ノ が4つの連（Tribe),すなわちSphaerobacteria (球 形の細菌），Microbacteria (小型の細菌）， Desmobacteria (手綱状の細菌），Spirobacteria (螺旋 状の細菌）に分類されたのだ.