釧路湿原に生育する植物体のδ~(15)N値による河川水中窒素の影響評価の可能性

摘要

釧路湿原に流入する河川は，融雪期や大雨の時にしぼ転ぼ湿原内に氾濫する．このため，釧路湿原の集水域に存在する農耕地から流出する窒素が，湿原の植生に影響を及ばすことが懸念されている．窒素源を窒素固定と雨水に依存している林地の植物と土壤は，大気のδ~(15)N値（ゼロ）に近い値をとること，また，河川水のδ~(15)N値ほ，流下する過程で生活排水や畜産排水の影響を受けて，また脱窒によって徐々に高くなることが知られている．湿原（泥炭地）は河川下流に位置し，低層湿原の植物汝窒素源を外部から流入する窒素に依存しているのに対し，高層湿原の植物ほ窒素源を窒素固定と雨水に依存している．このことから，低層湿原の植物は河川水のδ~(15)N値の影響を受けること，高層湿原の植物は林地と同様にゼロに近いδ~(15)N値であることが予想される．