家畜糞堆肥と硝酸アンモニウムを併用した場合の窒素利用率の変動 －コマツナの小ポット栽培試験による検討

摘要

堆肥は土壌改良効果を期待して耕地に施用される．しかし最近では肥料成分含有率が高い堆肥が増加しており，肥料成分の一部を堆肥によって代替させることが提案されている（牛尾ら，2004）．堆肥の窒素肥効を推定するために，著者ら（松田ら，2007）はコマツナと1L容ポットを用いた栽培試験を行い，短期間の窒素供給量は堆肥の水溶性窒素含有量から推定できることを示した．一方，実際の圃場では堆肥と化学肥料が併用され，化学肥料窒素の有機化量や作物による利用率は有機物の併用によって変化する（Trehan and Wild，1993；Choi et al．，2001；Nishio and Oka，2003）．さらに土壌の有機物含量によって有機質資材の無機化窒素畳も変化する（Sorensen and Jensen，1995）．実際に農家圃場土壌での堆肥窒素の吸収量はマサ土での栽培から予測された吸収量よりも多かった（松田ら，2007）．このように土壌有機物，化学肥料，有機質資材が共存する条件では各々に含まれる窒素の動態は複雑であると予想されるので，本試験では土壌有機物の少ないマサ土を用いて，併用された家畜糞堆肥と硝酸アンモニウムの窒素供給が互いにどのように影響するかを検討した．