土壌倫理の射程 一食と農，リスク，未来世代一

摘要

今日，複雑かつ相互に関連する政治的，社会経済的，物 理化学的要因により，地球上の様々な地域で土壌資源の深刻 な劣化や生物多様性の喪失，都市への人口集中に伴う人々 の土壌への開心の希薄化などが進行している.これらの 人為的に引き起こされつつある世界的な危機に対応するため，2015年の国際土壌年に，国連食糧農業機関（Food and Agriculture Organization of United Nations: FAO)は，第65回総会において，有限の土壌資源をより持続 可能に活用するための方針を定めた，改訂世界土壌憲章 (Revised World Soil Charter)を採択，公表した.改訂世 界土壌憲章では，健全で適切な土壌管理のために，国家 間レベルのみならず地域レベルでのガバナンスの強化，そ れをふまえた政策の策定と実施，土壌資源への投資の促 進などの必要性が求められている（FA0, 2015;大倉-村 田，2018).