大腸菌群による甚急性乳房炎に対する乳房内冷却ならびに 抗菌性物質、消炎鎮痛剤の乳房内局所投与療法の検討

摘要

乳牛の大腸菌群による甚急性乳房炎（Acute Coliform Mastitis; ACM)は重篤な臨床症状を呈しての死亡や 廃用の他，全身状態が改善しても罹患乳房の泌乳停止や 乳質が改善しない場合があり，経済的損失も大きい.こ れらの病態にはエンドトキシンに誘発されたサイトカイ ンによる乳房内の過剰な炎症反応が関連すると考えられ ている.乳房炎治療の目標は罹患乳房の正常な泌乳能力 の回復であり，その為には乳房内の過剰な炎症反応を早 期に収束させる必要がある.今回我々は，ACM症例に おける乳房内の炎症反応を早期に収束させることを目的 として，乳房内冷却ならびに抗菌性物質，消炎鎮痛剤の 乳房内局所投与（乳房内冷却群）を実施した.本治療法 の治療効果を抗菌性物質全身投与（全身投与群）ならび に抗菌性物質全身投与、乳房炎軟膏併用（軟膏併用群） と比較，検討した.