ナキウサギの行動性休温調節性環境適応：温度的シェルターとしての巣穴の役割

摘要

ナキウサギ（ウサギ目ナキウサギ科ナキクサギ属）は寒冷を好み、高地や高緯度の寒冷地に生息し、氷河期の遺残種のひとつと考えられている。 耳が丸く小さく、尾は痕跡的であり、パンティングや唾液分泌塗布行動のいずれも示さず、有効な熱放散反応が欠除するため暑さに弱い。寒冷地に生息しながら冬眠せずに、エサを貯えて冬を越す特異な寒冷適応特性を示す。体重が100～200gと小さく体表面積／体重比が大きく、このことは寒冷環境下での体温保持には不利である。 ナキウサギの高体温（39．6～40°C）と高代謝率（予測値より＋35～40％）は寒冷環境での生存に寄与すると考えられるが、そのためにはより多くの食糧を必要となる。 草原住まいのナキウサギは地下にネットワーク状のトンネルを掘り、また岩住まいのナキウサギは岩の積み重なったガレバの岩と岩との空間を利用して巣穴と利用している。 この巣穴／岩の間のすき間は天敵から身を守るためのシェルターであると同時に、温度的シェルターの役割も果たすであろうことが想像される。 行動性体温調節から見た巣穴の役割をナキウサギの生息地の環境モニタリングから明らかにすることを試みた。