居住者視点によるヒートショック対策の検討

摘要

近年，地球温暖化対策に加え，震災、原発事故の発生により，少ないエネルギーで暮らす 必要性が高まっているが，過度の節電意識から生じる暖冷房機器使用の抑制が，極端な暑さや寒さの受 容を促し，高齢者に熱中症やヒートショック等の健康被害をもたらす恐れがある.ヒートショック（以下，HS)死者数は15,000人/年と推定されており"，HSを避けるためには適切な室内温度の維持が必要 不可欠であるが，日本における冬期の浴室や脱衣室，トイレの適切とされる温度の基準は種々の提案の 幅が大きく （17-25°C), do値などの実験条件も統一されていない。また現実の室温は，居住者が温湿度 を認知していない，節約のため機器の使用を抑制している，現状の室温が自身にもたらすリスクを過小 評価している等の理由により，前述より低いことが多い。HSを予防するためには，体感で判断するので はなく気温（温度計で測定された温度）を認知して行動しなければ，対策の実施は難しいと考える.そ のため，温度認知やHS対策に関する意識調査は居住者視点での対策を検討する上で非常に重要である.本研究では，HS対策を促進するために，居住者の冬期の温度認知の実態を明らかにし，温度計を見る ことによって居住者に温度認知させた後の自発的な行動の変化を知ることを目的とする.さらに対策の 試みとして安価な簡易断熱の有効性を検討する.