哺乳動物の受精胚操作技術の発展とその活用

摘要

バイオテクノロジーは、生物学の知識を人間生活（食品、衣服、医薬品、住居、道具）に利用する技術で昔から利用されてきた。 それらは1970年中期以降に発展した発生工学や組織培養で、作物、家畜の品種改良や酒、醤油、味噌、パン、チーズのような微生物の利用であった。 これらは伝統的バイオテクノロジーとも呼ばれているが、現在のバイオテクノロジーは、分子生物学や遺伝子工学をはじめとした多くの新技術を用いることで、伝統的バイオテクノロジーに対して、1．改良の早さ、2．対象生物種の数、3．生物種間の交配、に優れた成果をもたらしている。 バイオテクノロジーの一つである哺乳動物の初期胚の操作（晴乳類の受精前の卵子から着床するまでの時期の胚を人為的に操作すること）もl世紀以上も前から行われてきたが、凍結精液による人工授精技術は、特に牛（産業動物）における改良と増殖を大きく進めることになり、現在でも技術の根幹をなす繁殖技術として世界中で活用されている。 開発された初期胚の操作をおおまかな年代順に表1に示した。 今回は、これら哺乳動物、特に牛の初期胚の操作について概要と現在について述べる。