マイクロサテライトDNA多型による会津地鶏の遺伝的多様性と遺伝的位置

摘要

日本鶏の一部の品種は遺伝資源として保存が図られる一方，各地域の特産鶏肉の素材鶏としても保存が図られている。会津地鶏もそのような品種の一つである。 本研究では2006年，2004年および1989年に採血された純系会津地鶏3集団および大型会津地鶏，肉用会津地鶏について，ISAG／FAO推奨の30のマイクロサテライトマーカーを用いて遺伝的多様性の経時的な比較と他の日本鶏品種との遺伝的類縁関係を明らかにすることを目的とした。 平均対立遺伝子数において，純系会津地鶏3集団間に差は認められなかったが，平均ヘテロ接合体率の観察値（H_O）および期待値（H_4）では経時的な減少傾向がみられた。 1989年の純系会津地鶏集団は2004年および2006年集団に比べガ0が有意に高く，これは遺伝的に多様な個体を増やすために会津地鶏飼育集団間の人為的な交配があったものと推察された。一方，商用品種を交配して作出された大型会津地鶏および肉用会津地鶏のガEはいずれも純系会津地鶏よりも高い値を示した。 純系会津地鶏3集団のダsTは0．052であり，同一品種でありながら1989年から2006年にかけてわずかながら遺伝的差異が生じたものと考えられた。 D_(AS)遺伝距離にもとづくNJ系統樹においても1989年集団は純系会津地鶏集団内でサブクラスターを形成し，F_(ST)の値を支持する結果となった。 D_A遺伝距離にもとづくNJ系続樹では，会津地鶏は大型会津地鶏，肉用会津地鶏を含めて他の品種からやや離れて位置する結果となった。