冬期湛水、不耕起栽培の技術の系譜と今後への展望

摘要

本来ならば乾燥状態にある非稲作期の水田に，人為的に湛水することによって湿地としての機能を持たせる農地管理法が，慣例的に「冬期湛水」と呼ばれている。 これと不耕起移植栽培（以下，不耕起栽培。 なお，本報では不耕起直播栽培は対象としない）とを連携させた農法が，今日では環境保全などの観点から注目されている。 こうした一連の農地管理および栽培を行う農法を，本報では「冬期湛水、不排起栽培」と呼ぶこととする。この農法が有するとされる機能はこれまで種々指摘されてきているものの，現状ではそれらが十分に整理されておらず，そのことも相侯って科学的な議論は十分に為されていない。そこで本報ではこの農法について今後検討していくための一助となるべく，不耕起栽培ならびに冬期湛水が何に期待されて今日に至ったのかの系譜をたどりながら，この農法の特徴や課題について整理する。 その上で，これらの機能やこの農法の課題，普及の可能性をどう捉えるべきかについて言及する。