米国における農業紛争処理制度の枠組みと活用状況

摘要

わが国では現在，司法制度改革推進法（平成13年）に基づき「明確なルールと自己責任原則に貫かれた事後チェック救済型社会への転換」に向けた制度改革が進行中である。 本改革の一環で，平成16年に裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律（通称ADR法）が成立し，平成19年4月より施行の運びとなっている。 「裁判外紛争解決手続」とは，一般に仲裁，調停，斡旋等，訴訟手続きによらない紛争の解決方法を意味し，Aternative Dispute Resolution（ADR）の訳語である。 　 わが国のADR法は現在のところ，民事上の紛争の解決におけるADRの活用の促進を主な目的としているが，ADRの実践および研究の両面での先進国である米国では，ADRは許認可や規制の執行等の行政行為に係る紛争の解決にまで広く利用されている。米国では，1990年に行政紛争処理法（Administrative Dispute Resolution Act）が制定され，連邦機関に対し，ADRを利用して自らが当事者となる紛争の解決を行ってもよいことが明確にされた。 その結果，ADRの活用領域は拡大の一途をたどっている。 このような背景のなか，わが国の行政でも，米国で公共政策や環境問題等に関わる紛争の解決や予防に広く利用されているADRの一形態であるメデイエーションへの関心が近年高まりつつある。