共生窒素固定研究の最新情報（10）－根粒菌研究のためのリソース－

摘要

ゲノム生物学時代におけるマメ科植物と根粒菌の畢生モデルとして，ダイズと同様に有限伸育型根粒をつけるミヤコグサLotus japonicusとその根粒菌Mesorhizobium lotiの系と，エンドウヤアルファルファと同様に無限伸育型根粒をつけるタルウマゴヤシMedicago truncatulaと本来はアルファルファの根粒菌であるSinohizobium melilotiの系の，2つは双璧を成している。 特に前者は，ほぼ10年前デンマークのStougaardらによるモデル化の提唱以後，国内研究者による基盤研究により，モデル系としての条件の充実が著しい。 約1年にわたる本シリーズでは，共生窒素固定の研究道程と進捗状況が紹介されてきた。 根粒菌の側からは，分類，農地における動態，ゲノム解析，感染、根粒形成の分子生物学について，また，宿主マメ科植物の側からは，窒素固定産物転流の生化学，根粒特異的な遺伝子発現や共生制御の分子遺伝学解析などについて紹介されてきた。 以上の総論、各論を踏まえ，本稿では，新たなプロジェクトを実施するために必要な技術情報および生物材料のリソヤースに閲し，主にミヤコグサとその根粒菌の系について紹介する。 生物材料リソースとしては，著者ら自身が携わっている，ミヤコグサ種子の増殖と配布体制およびミヤコグサ根粒菌の整列化コスミドライブラリ小に関する報告に重点をおいた。