体細胞クローン豚の作出と今後の展望

摘要

分化した体細胞からクローン個体を得ることほ，これまで不可能とされてきた。 しかし，1997年に発表されたクローン羊“ドーリー”の誕生以来，体細胞クローン動物の作出が相次ぎ，これまでにマゥス，牛および山羊での成功例が報告きれている。体細胞クローンが誕生する前，移植する按には，未分化状態である初期胚の割球が主に用いられてきた。 上記の動物種においても，種々の発育ステージの初期胚を用いた受精卵クローンが，数多く誕生している。 しかし，豚の受精卵クローンの成功例は極めて乏しく，1989年に米国ミズーリ大学で報告された，4細胞期胚の割球を由来とする1頭の誕生例があるのみであった。 豚での成功例がこれまで乏しい理由の一つには，豚は多産系のため，優良個体を増産する目的での受精卵クローンの技術が，畜産の場で必要とされず，積極的な研究がなされてこなかったことがあげられる。 さらに豚の場合，妊娠の成立に複数の胚が必要とされるなど，他の家畜とは異なった繁殖生理学的特徴を持ち，技術的に困難であった点があげられる。