寒冷地にみるイネの深水潅漑はこうして進化した

摘要

分げつに与える採水の影響につも1ては，“生育制御”に関する一連の調査結果（大江ら，1994；大江 - 三本，1999；後藤ら，1997）に詳しい。 すなわち，イネの主茎最上位展開薬の葉身以外の部位をすべて水没させるといった，強度の深水ストレスが加えられると，主茎上位の特定の部位（伸長しつつあった最上位展開葉の葉鞘とそれに包まれる上位葉の葉身 - 葉鞘）の伸長（タテ生長）は明らかに促進される半面，特定の分げつ茎（原基を含めて4枚の寒が形成され，その第1葉が抽出しつつあるもの）め生育ほおしなべて抑制され，結果的に，分げつ数の顕著な減少につながることになる。 つまり，深水ストレスが加わることによって，各部位の位置と生育段階に応じた，物質分配の“優先顺位”が顕在化してくる旨のことが指摘されたのである。