河川由来の栄養物黄燐給ガ沿岸海域の生物生産に窯たす役割

摘要

一般に沿岸海域は生物生産性が高く，また生物多様性が高い海域として知られる。 沿岸海域が占める面積は全海洋の約8％であるが，一次生産量は全海洋の20％を超えるといわれる。 植物プランクトンや海藻海草類など海洋生態系を支える一次生産者の増殖が活発であり，魚介類の餌生物や生息場所を提供する重要な海域である。沿岸海域が高い生産性を維持する上では河川が大きな役割を果たしている。 河川水はそれ自体が栄養塩類を高濃度に含むことに加えて，河川の流人が沿岸海域の物理環境に作用することにより，海洋表面に栄養塩類を供給する役割を果たしており，これらの結果，一次生産量の増大に寄与している。 特に，河川を通じて供給される森林生態系を起源とする栄養塩が沿岸海域の一次生産を高め，その結果として魚類生産を高めているシステムに対する理解が進み，「魚付き林」という言葉も市民権を得たように感じる。現在では沿岸海域の環境改善のために山に木を植えようという「魚付き林運動」が日本全国でおこなわれている。本稿では河川由来の栄養塩供給が沿岸海域の生物生産，特に植物プランクトンの生産に果たしている役割について論じる。