東北地域の栽培に適した中食、外食用水稲品種 「ちほみのり」，「萌えみのり」，「えみのあき」の多収栽培技術

摘要

我が国における一人当たりの米の消費量は，1960 年代のピーク時には120kg近くもあったが，現在は 55kgにまで減少している.そして，米の消費形態は， 家庭で炊飯する内食だけでなく，中食、外食へ多様 化しており，中食、外食の占める割合は33%にまで 増加している（米穀機構2019).家庭用には「コシ ヒカリ」などのブランド米の人気が高い.一方，中 食-外食用においては，品種名が問われることは少 なく，様々な品種を用いることが可能である.実需 者が求める品種特性は用途によって異なる.弁当の 米飯やおにぎり向けには粘る米が求められるが，寿 司，丼物，冷凍の炒飯、ピラフ向けには粘る米の必 要性は低い.いずれの場合も低価格で入手できるこ とが望ましレヽ.そのために，生産者としては，低コ ス卜で多収の米を生産する必要がある.農研機構に おいては，北海道から九州まで，各地に適した低コ スト多収生産が可能な中食、外食用品種（業務用品 種）を育成している（山口 2019).これらの品種は 潜在的には多収であるが，多収を実現するためには， 品種特性を十分に理解して，それに応じた栽培管理 を行う必要がある.本稿では，東北地域に適した「ちほみのり」（太田ら2016)， 「萌えみのり」（片岡ら 2007), 「えみのあき」（梶ら2017)の多収栽培技術 について紹介する.