イノシシはとこまで跳べるか－被害防止対策研究－

摘要

近年，野生鳥獣による農林業被害が激増しており，農業が継続できない事態も見受けられる．とくに西日本の中山間地帯ではイノシシによる農作物被害（写真1～2）が深刻であり，大きな社会問題になっている．農林水産省生産局植物防疫課のまとめによると，平成13年度の全国のイノシシによる被害面積は17，400ha，被害金額は46億9，800万円にのぼる．西日本中心であったイノシシによる被害は，近年，北へ東へと広がっており，北陸地方や関東地方における被害が増加している．農作物の被害に悩む農家からはイノシシの徹底駆除や絶滅を望む声が多くあがっているが，生態系の安定や遺伝資源の保護の観点から，新たな問題に発展するのは目に見えており，選択すべき対策ではない．したがって，イノシシによる農作物被害を防止するためには，イノシシの生態学的，行動学的研究を行い，新しい防除技術の開発や，共存，共生に基づく総合対策の展開を図る必要がある．