耕作放棄に至るまでの農地利用の変遷と農家行動分析 －中山間地域の農家を対象として－

摘要

農家の高齢化，担い手不足等を背景に耕作放棄地は増加している（2005年39万ha，2000年から5年間で4万ha増加）．耕作放棄地の増加は，我が国の農業生産，ひいては食料安全保障にも悪影響を及ぼし，耕作放棄の抑制は農政の重要な課題である．耕作放棄は，①その農地を所有する農家が，自ら耕作あるいは保全管理することを放棄し（以下，自作放棄とする），なおかつ，②農地貸借等を通じて，他の経営体にも耕作されない場合に発生すると考えられる（図1）．従って，耕作放棄抑制には，①に関連して，［A］個別農家の意思決定の視点からと，②に関連して，［B］地域の農業構造の視点からの分析が必要であると考える．これまでの研究の多くは，主に［B］に関するものであり，［A］に関するものは少なく，農産物価格等の経営外部条件との関係が明らかにされていない．