気候変動による天候リスクの変化が半乾燥地域の 小麦生産に与える影響 -トルコ共和アダナ県を窠例として-

摘要

二酸化炭素等の温暖化物質の増加による気候変動 が起こりつつある現在，気候変動が経済活動や生物環 境に与える影響の評価は最も重要な研究課題の一つ となっている.特に，農業は気候変動による影響が最 も大きく現れる産業であり，その評価が盛hに行われ てきた1).農業の生産性は，気候などの自然条件と農 家の経済活動，それをとりまく社会経済的条件とが結 合して実現される.このため，気候変動による農業の 生産性への影響を評価するためには，気候変動による 作物の潜在的な生産性の変化と気候変動に対する農家の対応の両者を考慮する必要がある.気候変動に対する農家の対応を考慮するために， 農業経済学の分野では，地域レベルの統計データか ら誘導型の単収反応関数や利潤関数を計測し，気象 変数の変化に対する生産性の変化を推計する試みが行われてレ、る(Kaufrnann and Snell〔8].Segerson and Dixon 〔16〕）.これらの研究では，誘導型モデルの前 提として農家の利潤最大化行動が仮定されていた. したがって，気候変動に対する農家の対応は気象変 数の実現値に対するものに限定される.気候変動は 天候の平均値だけでなくその変動幅も変化させる. 農家が生産行動の決定時に生育期間中の天候を正確 に予測し得ないとき，天候はリスク要因となる.