土地利用計画過程における意思決定の空間分布変化ー人工社会における合理的な複数主体による計画の過程ー

摘要

地域計画の計画過程への住民参加（以下，「計画参加」）に関する研究は様々な研究分野で進められている。 計画参加に関する研究は，多くの場合「いかにして計画を立案するか？ 」，すなわち「計画化の技術」に焦点が合わされがちであり，「参加によりいかなる計画が策定されるのか」に焦点を当てた研究は存在しない。 我々は，参加者がそれぞれ自由に意思決定をした際に立案される計画の予測すらままならないのが現状である。 しかし，この課題を現地調査を基に明らかにするのは容易ではない。第1に，観察対象となる主体が多いため調査が困難である。 第2に，第1の問題が解決されても，意思決定の規定要因の多さが，彼らの意思決定の相互作用がもたらす帰結を論じることを困難にする。 最後に，時間と共に不可逆的に変化する現実の社会では，自然科学研究における実験のように，様々な条件設定を施し，各設定の変化が結果に与える影響を解明することは技術的にも倫理的にも不可能だからである。