木材の乾燥に関する研究の現状と課題

摘要

木材は乾燥によって寸法が変化するため，材料として利用するには乾燥が欠かせない。しかも，使用時に不具合となるような欠点を生じさせずに，効率よく，目的とする水分状態にまで乾かすことが求められる。 木材の乾燥研究は，広葉樹材の家具用材などの板材の人工乾燥を目的に発展し，より効率的な乾燥方法の開発，乾燥品質の評価に基づく適切な熱風乾燥スケジュール（温度，湿度の制御方法）の開発，乾燥処理に付随する水分移動や変形等の解明を基本的な課題としてきた。 1990年代になると，製材品の主要な供給先である建築をめぐる情勢（構法や工期，材料のプレカット化）の変化によって，乾燥した製材品の供給増が求められるようになった。 これを背景に，針葉樹製材工場への人工乾煉の導入が加速され，研究の対象が広葉樹材から建築用針葉樹材製材品へと大きくシフトし，対象となる断面も乾燥の比較的容易な板材から，乾燥が難しい柱や梁桁材へと変化してきた。図1には，過去10年間の木材学会大会の乾燥部門における研究発表件数の推移を示しているが，戦後造林されたスギ，ヒノキ，カラマツ，トドマツ等針葉樹人工林の生長を背景に，それらの効率的な乾燥方法，条件の検討や新技術の提案が行われてきている。最近は特にスギ材乾燥の効率化と品質向上が求められ　 そのための高温処理技術にかかわる研究が多くなっている。