カスケード方式頭首工の水理特性に関する実験的研究

摘要

近年，河川整備事業においては，河川環境の保全と生態系の保護に大きな配慮が払わられるようになっているが，水利構造物の改修事業も例外ではない。 本研究で取りあげた静岡県静岡市を流れる2級河川興津川の河口より12km地点に位置する和田島頭首工（Photo 1）は，老朽化に伴う全断面固定堰の旧頭首工の改修に際して，地元住民との話し合いの席で，「近自然型」「親水」が大きなキーワードとなり，減勢ユに階段式の落差工を用いることになった。 しかし，これまでにも階段式落差工は各地で施工されてきているが，河川地形，流況によっては適切な水理構造諸元を見出すことが難しく，所期の効果を得られていないものが多い。農林水産省構造改善局（現農村振興局）編の頭首工設計基準においても，階段式落差工を用いる場合には，「水理模型実陰により，最適の形状を見出すことが必要である。 」とされている。 そこで，当該頭首工では，階段式落差工部の設計に，これまでの知見から十分な減勢効果があると考えられた水クッション方式渓流取水工の設計方法を適用することとした。 また，頭首工越流水の階段状に流れ落ちる景観からカスケード方式頭首工と名付けられた。