ソバ（Fagopyrum esculentum Moench）における成長および収量関連形質に及ぼす施肥量の影響

摘要

ソバの成長，開花，結実および収量関連形質に及ぼす施肥真の影響について詳細な調査によって研究した．2000年および2001年に1、5000~(-1)aワグナーポットを用いて高度化成肥料（N，P_2O_5，K_2Oをそれぞれ15％，15％，10％含有）の施肥量をポットあたり1gから40gまで変化させて普通ソバ夏型品種のしなの夏そばを栽培した．植物体の成長および花房別に開花を経時的に調査し，収穫後，側枝を次位別および母茎上の節位別に分類して，主茎および側枝上の花房位置別に開花数および子実数を調査した．主茎の伸長期間，開花始期，初花節位，咲き上がり速度，主茎花房数，子実の大きさおよび1粒童は施肥量にほとhど影響を受けないことが明らかになった．施肥量の増加によって主茎長および主茎葉長が長くなったが，その差はそれぞれ約10cmおよび約2cmしかなく，それらが倒伏の主要な原因になることは考えられなかった．しかし，側杖の発育が促進されることによって植物体の上部が重くなることが倒伏の原因になる可能性は考えられた．2001年の40g区のような過剰の施肥によって，出芽および成長初期に害が発生することがわかった．しかし，順調に生育した個体のみを見た場合，施肥量の増加に子実の大きさおよび1粒重は影響を受けないが，1個体あたり収穫子実数および子実収量が増加した．このとき，施肥量の増加によって低節位の1次側枝および高次位側枝の発達が促進され，それらの側杖上の花房数の増加によって1個体あたり花房数が増加し，加えて1花房あたり開花数および結実率の増加によって1花房あたり子実数も増加することが明らかになった．それらの増加は主茎より1次側杖上の花房で著しく，2次側枝上ではさらに著しくなることがわかった．また，このとき開花期問が長期化し，1個体内における子実閏の成熟期の変異が大きくなると考えられた．このように子実数が増加したときでも，主茎，1次側枝，2次側枝の花房の順に結実率は低くなることが示された．したがって，施肥量の増加によって結実率の低い花房における開花数が全問花数に占める割合が増加し，1個体全体で見た時の結実率の増加は不明確になることが明らかになった．