日本電子顕微鏡学会第57回学術講演会

摘要

日本電子顕微鏡学会第57回学術講演会が、平成13年5月10日から12日にわたってアクロス福岡で開催された。 以下に、今後の我々の研究に有益と思われた発表および我々が行った発表の概要について記述する。 親織，細胞表面における抗原の検出には、金コロイド標識抗体を用い、これを走査型電子顕微鏡（SEM）の反射電子で観察する免疫SEMが用いられている。 しかし従来の方法では、細胞表面抗原性の失活や金コロイドの非特異反応などによりバックグランドが強く、抗原の局在が明らかとならないことがしばしばあった。 演者はこの問題を解決する方法について報告した。すなわち、腹膜炎を惹起したマウスの大網を持出し、これを移植臓器の保存に用いられているUW液中に入れ、この中で細胞接着分子特異抗体および金コロイド標識2次抗体との反応を室温で行った。そしてグルタールアルデヒドで固定の後、走査型電子顕微鏡を用いて反射電子で観察した。 その結果、腹膜炎により腹膜表面に遊走していたマクロファージの細胞表面の全域にわたり弥漫生に分布する接着分子やruffles や microvilliに限局する接着分子が明瞭に観察された。 この方法はこれまで困難であった免疫SEMにおいて有用な方法であるが、今後の課題としては、組織内の細胞表面抗原および細胞質内の抗原の分布などへの応用について、さらなる工夫が必要である。我々にとって、この発表は病原微生物の細胞表面への感染様式の解明などへ応用することが可酪ではないかと考えられた。