国際獣医麻酔学会（1997）: 麻酔下のウマにおける循環動態の管理法

摘要

吸入麻酔により維持されたウマは，ヒトや伴侶動物に比較して麻酔後の死亡率や合併症の発症率が有意に高い（Young et al．1993，Johnston et al．1995，1996）。 心停止，筋損傷，ミオパテーなどの合併症の多くは，麻酔後24時間以内に発症し，これらには麻酔下での心肺機能の変化が関与している（Flaherty et al．1996）。 麻酔下の低血圧は，覚醒後の披行の要因になり得る（Grandy et al．1987，Cribb 1988，Lindsay et al．1987，Richey et al．1990）。 また，外科手術が必要な痛痛例では，しばしば全身血流量の減少，高窒素血症，高エンドトキシン血症，血祭中電解質バランスの不均衡および腹囲膨満などがみられる。これらはいずれも麻酔下での低血圧，酸素供給量や組織液流量の減少などの要因となり，覚醒後に様々な組織機能に対して悪影響を及ぼす。 ウマやその他の動物において，麻酔中の循環機能の改善を目的とした研究が数多くなされており，電解質輸液，高張食塩水あるいはカテコールアミンの投与などが実施されている。