牛の灸シリーズ1灸療法による牛病の診断と治療

摘要

産業動物臨床分野で対象となる動物すべてが食品となることから，抗菌剤や向神経薬の投与が制限させられる場合が多い。それらの休薬期間の場合，または薬治を主体とした処置で効果不確実な場合に灸治療を施して，予想以上の治療効果をもたらすことがしばしばある。我々は獣医関連学会や研究会などにて，牛の各種疾病に対する灸療法の試みについてこれまで発表し，発熱時においても有効であることを立証した。 ここでは，それらのまとめとして例数を増やして乳用牛，肉用牛のすべての疾病に灸療法を適用し，その効果を確認できたので以下に示す。 なお，方法や個々の症例およびツボ，灸の適応症などの詳細図説についてはシリーズとして次回以降に紹介することにした。 東洋医学の中で針灸療法の効能や作用については未だ不明な点が多いが，できるだけ薬物に頼ることが少ない針灸療法を重祝することは人医学を含めて世界的な風潮となりつつある。 灸は牛の臨床上きわめて有効であり，本シリーズでは推測も含めて灸について考えてみたい。