皮下輸液一体液補充療法としての皮下輸液

摘要

輸液をするに当たり考えるべきことが5つある。まず， その患畜の状態が輸液の対象であるか否かである。至極当 然のように思われる力、無駄な輸液をしていないか一度は 考えてみてはどうだろうカゝ。不必要な輸液は.循環器と腎 臓に余分な負荷をかけるだけであろう。これまでに言い尽くされてきたことではある力,輸液を するとなつたときに考えることは，残りの4つである。す なわち.何を（輸液剤），どれだけ(投与量).どこから（輸液 ルート），どれだけかけて（投与速度）の4つである。本特集 においても，この4つの視点を軸としてテーマが取り上げ られてきている。このなかの「どこから丄つまり投与ルー トには静脈，皮下，腹腔内および経口の4つがあり，その 中心となるのはやはり静脈内輸液である。残りの3つの ルートのなかで次に注目されるのは経口輸液である。そし て，皮下と腹腔内はあまり顧みられていない。皮下輸液の 最も古い文献は1895年に報告されている1'力5',その後.人 医領域においては1940年代に小児科領域で行われてレゝた。 ところが，高張液や電解質を含まない溶液の大量投与によ る浸透圧シフトと.これに起因する体液の移動によって生 じるショックが報告され.実施されなくなっていった。し かし近年になって，乳幼児などで静脈内輸液が困難な患者 や，在宅医療における高齢者や老人医療，終末医療領域あるいは長期投与で見直されている。そこで，本稿では 皮下ルートによる輸液療法について考察してみたい。