牛の臍ヘルニアにおけるメッシュを用いた整復手術例

摘要

躋ヘルニアとは，先天的な原因や分娩介助の失宜によって，胎子期に臍帯が貫通していた（臍輪）が出生後も開 存したままとなり，そこから腸管などの腹腔内臓器が逸脱した状態であるとされている1、ヒ卜においても新生子 に一定の割合で臍ヘルニアが確認され，多くの場合には自然治癒を待つが，最終的な治療は手術による整復が一般 的である2'3)。牛の臍ヘルニアは臨床現場においてしばしば遭遇する症例である。治療方法はヘルニア輪の大きさにより，非観血整復法では腹壁ネッ卜を用いた臍ヘルニア部の圧迫整復4),観血整復法ではVest-over-pants法5)や メッシュを用いた方法6'7)が用いられている。また，症例に適合した医療用メッシュの入手が困難，もしくは腹圧 に対するメッシュの強度の問題から縫合用の非吸収糸を利用した報告7)もある。その他，症例によっては重度の臍 帯炎や尿膜管遣残を伴った症例も報告3)されている。今回，岩手大学動物病院に二次診療として依頼のあった臍ヘルニアについて医療用メッシュで整復した5症例の 概要を報告する。5症例中，臨床現場で臍ヘルニアの整復を試みたが治癒せず再発を確認したため，再手術の依頼 をされた症例は3例あった。