きのこの化学雑記帳(1)- ドクササコ有毒成分の研究—

摘要

大学4年生になると研究室に配属され、卒業研究が始まる。その最初の日、教授室に呼ばれ、どういうテーマ.内容にするかが決められる。同期の新4年生は4人、教授は4つの研究テーマについて説明を始めた。その中で、「ネズミを殺すのがあるのだが...」と言われた時、何かとても面白そ、つだと感じ、すぐさま「それをやらせて下さい！」と志願した。それが「ドクササコ有毒成分の研究」という毒きのこの研究で、毒性成分を化学的に解明しようというものだった。以来すでにお年、きのこだけではなく、ハチ毒.クモ毒.へビ毒など、とにかく天然の毒の研究をずっと続けてきた。「ネズミを殺す」ことに興味を覚えたのが、その後の研究者人生を決定づけたわけである。トクサコClitocybe acromelalgaは、日本の東北から北陸.近畿地方を中心に分布する毒きのこで、奇妙な中毒を起こすことで知られている(写真①)。