ゥシにおける最終糖ィ匕産物と 繁殖の関係

摘要

ヒトにおいて不妊の原因の一つはその生活習慣にあると言われ，高エネルギー食品の過剰摂取は， 直接あるいは間接的に不妊の原因になっていると考えられている。体内に過剰に摂取されて余剰となった糖は，非酵素的にタンパク質と結合して最終糖化産物（AGEs)を生み出す。AGEsはヒトでは 様々な疾患に関与しており，卵巣や子宮におけるAGEsの蓄積は，生殖機能に抑制的な作用を及ぼす ことが示されている。受胎率低下が問題となっているホルスタイン経産牛では，泌乳に伴うエネル ギー収支の不足分を補うべく穀類比率が高い飼科を給与するような飼養体系がとられている。しか し，この高エネルギーの穀物主体の飼料は糖の過剰摂取を引き起こし，AGEsの産生，蓄積が亢進さ れる可能性がある。また，AGEsの前駆物質であるメチルグリオキサール（MGO)は，グルコースに 比べて反応性が高く， AGEsの形成を促進する一方で，それ自身も酵素の不活性化や細胞毒性を示し， 直接，細胞機能に影響を及ぼす。筆者らはこれまでにfゥシの子宮内膜間質細胞にAGEsが蓄積して いることを確認し，さらに，ホルスタイン経産牛.(TMR給与）における血中MGO濃度が，黒毛和種経 産牛(粗飼料給与）と比較して有意に高いことを示している。これらのことから分娩後の乳牛では，穀 物主体の飼料によって増加するAGEsの蓄積や血中MGOが卵巣や子宮の機能低下を引き起こし，受 胎率が低下している可能性が考えられる。