蹄の構成成分と機能（2）－脂質とミネラルの機能－

摘要

蹄はウシの体重を支え，それを運動へと繋げる重要な組織である。その働きを発現するために蹄に与えられた物理的特性が「硬さ（硬度）」と「しなやかさ（弾性力）」である。体重を支えるための絶対的な硬さと，蹄鞘内部の軟部組織（神経および血管）への過重をできるだけ小さくするための弾性力が，微妙な調節下においてバランスよく発現している。こうした物理的特性の中心的役割を担うのが，第1回目で一強さを決めるタンパク質の機能－としてご紹介したケラチンである。髪の毛よりもクモの糸よりも遥かに細いケラチン線椎が，何故ウシの体重を支えられるのかということについて，細胞生物学的な角度からご紹介した。いわば，蹄の「屋台骨」（構造タンパク）ともいえるケラチンであるが，とはいってもそれだけでは蹄本来の機能は発現されない。家に壁や内装があるように蹄にとって必要な成分がまだある。