中小規模酪農におけるワクチンを用いた乳房炎対策の試み

摘要

2017年7月から2018年12月にかけて，飛,I単家畜保健衛生所管内において，酪農家，酪農業協同組合, 農業共済事務組合，市役所，開業獣医師，製薬会社と共同で乳房炎ワクチン試験を行った。対象酪農 家は，家保での病性鑑定において，乳汁検査で黄色ブドウ球菌（SA)が検出された5農家および甚急 性乳房炎での死廃の多い1農家とした。いずれも飼育規模が10-60頭までの中小規模酪農家で様々な 対策を行うも乳房炎の発生に苦慮していた。ワクチン接種の結果，バルク乳の一般細菌数は，季節的 な変動はあるもののワクチン開始時より低下していた。牛群検定デー夕の平均体細胞数には明らかな 差はなかったものの，乳房炎罹患牛頭数や診療回数が減少する傾向がみられた。また，甚急性乳房炎 での死廃は顕著に低下した。これまでワクチンの効果が報告されている大規模農場だけでなく，中小 規模酪農家においても個々の酪農家で問題となっている乳房炎の原因菌に合わせ，乳房炎ワクチンの 使用を対策の選択肢に入れても良いのではないかと考えられた。