乳牛における分娩前後の栄養状態と繁殖成績との関係（その2)

摘要

今日、乳牛の繁殖成績低下は世界的問題とな り、世界各地で泌乳牛の栄養が泌乳と繁殖機能 に及ぼす影響に関する研究が多数報告されてい る。そのような中、近年、繁殖能力に開する遺 伝的能力評価も行われており、乳牛の繁殖成績 は少しずつ改善の方向にあると思われる。また、 国内では最近、家畜改良事業団の「乳用牛群能 力検定成績のまとめ」により、乳牛の繁殖成績 に関するビッグデ一タの解析結果が紹介される ようになり、繁殖成績の実態が分かるように なった。例えばこれまでは、分娩間隔を平均値(平成29年度は平均433日）のみで評価するこ とが多く 、単に分娩間隔が長いと判断してきた。 しかし、平成29年度の「乳用牛群能力検定成 績のまとめ」によると、分娩間隔の最頻値は 357日、中央値は407日であり、日本の乳牛の 約半数は順調に分娩し、順調に次も妊娠してい ることがよく分かる。一方で、繁殖成績の低迷 に苦慮している農家が今でも多く存在すること も事実である。本誌前号（堂地、2019)で紹介 したように、繁殖成績は牛群間（農家間）に差 がみられる。また、同一牛群内の個体間にも繁 殖成績に差がみられる。なぜ、牛群間や個体間 の繁殖成績に差（時には大きな差）がみられる のか考えてみる必要がある。著者らは、所属す る大学農場の自動搾乳牛舎（ロボット搾乳牛舎）で長年繁殖に関する調査を行っている。この牛群は約20頭程度の試験規模牛群で、過去約20 年間の間に乳量は順調に増加して管内でも有数 の高泌乳牛群になった。しかし、繁殖成績は牛《 群の世代が更新するに伴って低下してきた。こ の高泌乳牛から長期間にわたつて得られた情報 は繁殖成績の検討に有意義であることから、本 稿ではその概要を紹介しながら乳牛の繁殖成績 に及ぼす要因（特に栄養状態）について考える ことにしたい。