養鶏場で問題となっている非感染性疾病の現状

摘要

養鶏産業では感染性疾病による経済的被害が最も大きいと推察される力5.病原体の感染に因らない非感染 性疾病も発生している。その原因は孵卵管理を含む飼養管理（環境要因），代謝異常または機能不全，ワク チン接種，ビタミンを含む栄養成分の欠乏または過剰，毒素による中毒，遺伝的素因，その他の原因，およ び原因不明等，多岐に渡っている。特に近年，品種改良の進展や飼養規模の大型化が進み，環境要因，代謝 異常または機能不全，および遺伝的素因等を要因とする非感染性疾病の増加が問題となってきており，これ らによる経済的被害はかなり大きいものと推察される。しかし現状では，農場段階での非感染性疾病の発生 に関する統計資料に乏しく，個々の疾病の全国的な発生状況は不明である。本稿では個々の非感染性疾病の 発生状況を明らかにするとともに，発生が多いと推察された主な疾病，すなわちブロイラーの脊椎滑り症， 腹水症，突然死症候群.および採卵鶏の卵墜，脂肪肝出血症候群，尿酸塩沈着症について最新の知見を記述 した。非感染性疾病による被害を減らすためには，産官学のより強固な研究協力体制を構築し知見を蓄積す ることが必要である。特に，遺伝的素因の解消には育種会社との連携が必須であり，代謝性疾病の制御には 飼料開連会社との協力も必要となる。高品質な鶏卵および鶏肉をより低コストで生産するためには，業界を あげて非感染性疾病の制御に取り組むことがますます重要となっている。