鶏の遺伝子組換え技術のこれまでとこれから③-遺伝子組換えという技術の基礎(1)-

摘要

ここまでの連載では、鶏における遺伝子組換え技術を理解して頂くために、育種(品種改良)と遺伝子組換えについて、二回に分けて述べさせて頂いた。それは生物の遺伝子組換えについての概念的な話題を多く提供し、その技術をとりまく世界情勢を考えて頂きたかつたからである。今回からは、いよいよ生物の遺伝子組換え技術について、その詳細と鶏における遺伝子組換え技術の現状についてまとめてみたいと思う。少々専門的な話になつてしまう面もあるが、遺伝子組換え技術についてまったくの素人の方からある程度の知識をお持ちの方まで可能な限りわかりやすく説明したいと考えている。今回は、遺伝子組換えの基礎知識についてである。「遺伝子組換え」という言葉は、近年メディア等で頻繁に取り上げられることから、この言葉自体を聞いたことがないという方はいないだろう。では。「遺伝子組換え」とはどういうことなのか、正確に理解されている方はどの程度いらつしやるだろうか。言葉のままの理解では、「遺伝子」を「組換えること」となるわけだが、遺伝子を操作することと漠然とした概念で理解されていることが多いように思われる。本連載の第一回で記述したように、配偶子形成過程に見られる「交叉」もまた狭義の「遺伝子組換え」ではあるが、ここでは人為的な遺伝子組換えについて説明したい。