低分子性リグニン分解菌から見いだされた二原子酸素騸酵素DesBの基質特異性メカニズムの解明: ルプ麂液中で生き延びるために分子進化した二原子酸素添加酵素

摘要

Sphingobium sp. SYK-6はパルプ廃液から発見された 細菌で，低分子性リグニンを分解代謝することができ る.本株の低分子性リグニンの代謝では，多様な低分子 性リグニン中間代謝物が，プロトカテク酸（PCA)お よびその誘導体であるガリック酸(Gallate)と3-ひメ千 ルガリック酸（3MGA)に集約される(1)(図1).本株の 代謝経路において，これら3種のプロトカテク酸誘導体 は，3種類の基質特異性の異なるExtradiol型二原子酸 素添加酵素(LigAB, DesB, DesZ)により，芳香環が開 裂を受ける'2たこのうちLigABとDesZは比較的基質特 異性が広く，特にLigABは3種の化合物を基質とするこ とができる.一方，DesBは基質特異性が極めて狭く， ガリック酸のみを選択的に分解する（図1B).—見， DesBは，SYK-6株の低分子リグニンの代謝に不要と思 われる力、rfesSを欠損した変異株は，低分子性リグ二 ンを炭素源とした環境で培養するとガリック酸が細胞内 に蓄積し，生育阻害を引き起こす(2>.このように， SYK-6株はパルプ廃液中での生存、適応するために， DesBをガリック酸に特化するように分子進化してきた と考えることができる.そこで本稿では，SYK-6株の環境適応の鍵となるDesBの高度な基質特異性の分子メ力 二ズムを構造生物学の視点から紹介する.