リンゴ樹における簡易樹冠評価法の開発と薬剤到達性評価

摘要

農薬ドリつト量が少なく薬剤到達性のよい樹形を開発 するために，枝葉の混み具合を短時間で簡易に測定でき る簡易樹冠評価法を開発し，それを利用してリンゴ樹の枝葉の混み具合と薬剤到達性との関係を検討した.簡易樹冠評価法とは，試作した葉群密度判定板を用い て測定された葉群密度判定値（仮称）を利用する方法である.葉群密度判定値とは，縦90cm X横180cmのべ ニヤ板に直径20cmの赤丸を4個X 7列の配列で合計 28個を配置し（以下このベニヤ板を葉群密度判定板と 称す)，測定者の反対側の作業道に葉群密度判定板を立 て，測定者側から樹冠内部を通して見える赤丸の程度を， 達観調査により数値に転換した値である.樹あたりの葉面積，植栽面積あたりの葉面積，樹冠下 相対照度，総新しよう長，幹周の各要因と葉群密度判定 値，および，樹の薬剤到達性との間に高い相関関係があ つた.さらに，葉群密度判定値と薬剤到達性との間にも 高い相関関係があった.これらの結果は，葉群密度判定 値がリンゴ樹の枝葉の混み具合の推定に有効であるこ と，並びに枝葉の混み具合の小さな樹の方が薬剤到達性 が高いことを示していた.以上のように，葉群密度判定値を利用した簡易樹冠評 価法は，樹園地毎のリンゴ樹の枝葉の混み具合と薬剤到 達性を短時間で簡易に評価できると考えられる.簡易樹 冠評価法の利用によって農薬ドリフト量の少ない新しい 樹形の開発を効率的且つ迅速に進めることができると考 えられる.