牛ウィルス性下痢（BVD)ウィルス感染症対策 -この10年のあゆみ-

摘要

牛ウィルス性下痢ウィルス（BVDV)は、下痢を呈し ていた牛から昭和10年代に分離されたウイルスで、やや 後れて牛ウィルス性下痢粘膜病（BVD-MD)の病原因 子としても認識されるようになった。その発症機序に、 ゥィルス独特の性状が密接に関与しているため、BVD-MD を発症することはまれであり、生産現場ではほとh ど遭遇することのない感染症であると長い間考えられて いた。ところがこのウィルスが牛に引き起こす病態は、 臨床症状も病変も多様であり、畜産経営に多大な経済的 損失を与えていることが明らかにされてきた。これら牛 とウイルス双方に様々な病態と性状が認識されるように なり、平成12年にはウィルス名称がBVD-MDウィルス からBVDV1およびBVDV2と国際的に正式に変更され、 国際獣疫事務局（OIE)にリストアップされる病名も BVD-MDからBVDに変更された。日本においては、家 畜伝染病予防法の届出伝染病に指定されているため、法 律名BVD-MDという記述が公式名称であるようである。 この名実ともに様々なとらえ方をされる牛のウィルス感 染症対策について、平成20年以降現在までの北海道内で の対策状況を紹介する。