脂溶性ビタミン類による遺伝子発現制御の分子機構に関する研究

摘要

脂溶性ビタミンA/Dは核内受容体[それぞれレチノ ィン酸受容体(RAR)およびビタミンD受容体(VDR)] のリガンドとして, 様々な組織で多彩な生理作用を発 揮している.例えば,ビタミンAには視覚作用の ほか, 免疫系や粘膜, 皮膚などの維持作用がある.一方, ビタミンDは生体内のカルシウムホメォスタシスや免 疫系の維持などに必要である.一般に, これら多彩な 生理作用はRARやVDRを介するリガンド依存的な標 的遺伝子群の発現調節によつて発揮されることがわかっている.また, ある細胞種においては, RARや VDRを介した細胞分化の誘導から, その生理作用を発 揮する場合もある.これまで, 前者の核内受容体を介 する一過性の転写制御機構については多くの研究がな されてきた.その一方で, 後者の分化を説明する機構 に関して未だ多くの不明な点が残されている.