羊の飼育と動物福祉: ミュールシングの問題から考える

摘要

これは羊に関する専門用語ですが，最近 Iウール関係者からの問t 、合わせでやたらと私 の耳に入ってくるようになりました。前号シ一プジャパンNo.88に「ハエウジ 症」について掲載しましたが，オーストラリ ァなどでは，「FLY STRAIKEJといってハ ェが羊の体，特に糞で汚れたお尻の周りに卵 を産み付け，孵化したハエの幼虫（ウジ）が 肉を食い破り，羊の肉を餌にして，増殖して いくという被害が羊の飼育上の問題になって います。オーストラリアの主要品種であるメ リノ種は，産毛量を増やす目的で皮膚面積を 増やす改良を行ってきた結果，皮膚に皺が多 く，お尻の周りの部分ではこの皺の間に尿や 水分が入り込み，ハエが産卵するのに適した '状態を作り出し，特に被害が大きい。この予 防手段の一つとして，子羊の尻尾の付け根 (尻尾は幼齢のうちに切断する）の周りの皮 庸を切り取り羊毛が生えないようにして，そ の部分にハエが寄り付かないようにするテク ニックのことをミュールシング（mulesing) と言います。この命名は考案者のジョン、 ミュールズに由来したものです。