リモートセンシングによる農業生産力の情報収集能力

摘要

リモートセンシングという用語が一般的に用いられるようになり、多くの報告がされている。リモートセンシングの特徴と、農業分野でも農業生産力に関する研究や利用状況について国内外の例を挙げてまとめた。米国のランドサット衛星打ち上げに伴って始まったLACIEやAgRISTERSプロジェクト、欧州連合で打ち上げたSPOT衛星を中心としたMARSプロジュクトについて報告し、農地利用が複雑で衛星データの低観測頻度な日本との違いについて繋理した。 特に、日本では農業情報の調査体制が確立しており、高い推定精度を実現している。 そのような中でも、実用化を目指して水稲作付け面積の推定に利用する動きがある。現在、農林水産省経済局統計情報部を中心として農業環境技術研究所、宇宙開発事業団、リモートセンシング技術センターで共同研究しているが、SARの一つであるRADARSATデータを主体とした全天候型水田面積の推定手法について報告した。SARデータは天候に左右されず夜間でも観測可能である。 また、RADARSATはセンサの観測角を変更でき、必要な時期に対象地区の観測が可能である。 解析の結果、水田単作地帯である北海道石狩川流域では統計値と本手法を用いた推定値が市町村単位でよく一致し、16市町平均で-1.5％の誤差であった。 また、二毛作も存在する栃木県中一南部地域についても適用した結果、市町村単位で北海道石狩川流域の結果より誤差が大きいが21市町村平均で+1.0％の誤差があった。 ここで報告した推定手法は水稲作付け後の早い段階で天候に左右されず推定が可能で、実用化に向けて有効といえる。